チタンカップの世界には、長らく「0.3mmの壁」があった。
EVERNEW(エバニュー)は日本のアウトドアブランドとして、0.3mm厚のチタンカップで軽量クッカー市場をリードしてきた。Ti 400FD(50g)・Ti 570FD(55g)は世界中のULハイカーに使われ続けてきた定番中の定番だ。
その壁を破ったのが、2025年5月に登場したApex cup t0.2(アペックスカップ ティーゼロポイントツー)だ。アウトドアブランドとして世界初となる0.2mm厚チタンのカップ化に成功し、容量300mlのカップを29gで実現した。そして2026年、このApexシリーズに専用の蓋兼ディッシュとしてApex mulTidish(アペックス マルチディッシュ)が加わった。
この記事ではApexシリーズを軸に、0.2mmチタンとは何か・なぜ29gが可能なのか・mulTidishとの組み合わせがどう機能するかを徹底解説する。
- EVERNEW(エバニュー)とは:1924年創業・チタン加工の老舗
- 0.2mmチタンとは何か:絞り加工の限界への挑戦
- Apex cup t0.2(アペックスカップ ティーゼロポイントツー):スペック完全解説
- Apex cup t0.2の設計思想:4つのこだわり
- 2026年新作:Apex mulTidish(アペックス マルチディッシュ)完全解説
- Apex cup t0.2(アペックスカップ)
- Apex mulTidishと旧mulTiDishの違い:どちらを選ぶか
- スタッキング完全ガイド:「OD缶+Apex cup+Apex mulTidish」をどう収納するか
- こんな人にApexシリーズをすすめる・すすめない
- よくある質問
EVERNEW(エバニュー)とは:1924年創業・チタン加工の老舗
エバニューは1924年創業の東京・江東区に本社を置く日本メーカーだ。学校体育用品(跳び箱・ライン引き)から始まり、アウトドア部門では超軽量チタンクッカーの世界初開発で知られる。「Ever New(増々新しい)」を社名の由来とし、チタン絞り加工技術でアウトドア業界に独自ポジションを築いてきた。
国内製造・純チタン・職人の手による精密加工という3点がエバニューのチタン製品の核だ。0.4mm→0.3mm→0.2mmという壁を一社で破り続けてきた技術力は、同カテゴリの追随を許さない。
0.2mmチタンとは何か:絞り加工の限界への挑戦
チタンカップを作る基本的な製法は「絞り加工」だ。平らなチタンの板材を金型に押し込んで、カップ状に成形する。この加工には素材の伸び率と強度のバランスが必要で、薄すぎると加工中に破れる。
世界中の多くのチタンカップは0.4mm厚が標準だ。エバニューはここから0.3mmのカップ化に成功し、Ti 400FD(50g)などの定番シリーズを生み出した。次の目標だった0.2mmはさらに難易度が高く、「絞り加工でカップ状にする」こと自体が長期間できなかった。
解決の鍵は国産純チタン材の選定と金型・プレス条件の精密な最適化だった。0.2mmは一般的なアルミホイルに近い薄さで、単体では指でわずかな力をかけても変形する。その薄さをカップとして成立させるために、縁のフチ巻き(端部の折り返し)で剛性を確保する設計が採用されている。
Apex cup t0.2(アペックスカップ ティーゼロポイントツー):スペック完全解説
| 製品 | チタン厚 | 重量 | 容量 | 外径 | 深さ | 価格 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Apex cup t0.2(ECAL731) | 0.2mm | 29g | 300ml | 外91mm | 57mm | ¥4,730 |
| Ti 400FD(ECA530) | 0.3mm | 50g | 400ml | 外95mm | 52mm | ¥2,860 |
| Ti 570FD(ECA531) | 0.3mm | 55g | 570ml | 外106mm | 60mm | ¥3,080 |
| 旧mulTiDish(EBY280) | 0.4mm | 13g | — | 外104mm | 5.5mm | ¥1,540 |
| Apex mulTidish(ECAL761)★NEW | 0.4mm | 15g | — | 径94mm | 14mm | ¥1,650 |
Apex cup t0.2が29gという数値を達成できた理由は3つある。0.2mmという薄さ・容量300mlへのサイズ最適化・110サイズOD缶へのシンデレラフィット設計だ。
容量300mlは「250mlのお湯を沸かせる最小サイズ」として設計された。コーヒー1杯・カップラーメン1杯分の湯量を確保しつつ、重量を削れる限界まで削った結果が29gだ。エバニューの従来主力だったTi 400FD(50g)と比べると21g軽い。
Apex cup t0.2の設計思想:4つのこだわり
① OD缶シンデレラフィット
110サイズのOD缶(高さ約67mm)にApex cupを被せると、缶の高さとカップの深さがほぼ一致する。これはApex cupの深さ57mmがOD缶高さより意図的に低く設定された結果で、OD缶を収納した状態のまま上からApex mulTidishを被せられる。この設計で「OD缶+Apex cup+Apex mulTidish」の3点がほぼ同一体積に収まる。
② 沸騰時間の短縮
チタンは熱伝導率が低い素材だ(アルミの約4%)。しかし素材が薄い(0.2mm)ほど、熱源からの熱が内側の水に伝わるまでの抵抗(チタン材の厚み)が減る。0.3mmから0.2mmへの移行で、沸騰時間が短縮し燃料消費量の削減にもつながる。
③ 錆移り防止のクリアランス設計
110サイズOD缶とのスタッキング時、Apex cupの高さはOD缶より意図的にわずかに低い。OD缶底部のスチール部分が缶内部に触れると錆移りが起きることがある。このクリアランスはその錆移りを防ぐための細部設計だ。宗像山道具店のレビューでも「実物で見て感激した」と語られているポイントだ。
④ 単体運用の注意点
0.2mmは「厚めのアルミホイル程度の薄さ」と公式が説明する。本体部分は僅かな衝撃で変形する可能性があるため、単体でのザック内持ち運びは推奨されない。OD缶やポットにスタッキングして衝撃から守る運用が前提だ。
2026年新作:Apex mulTidish(アペックス マルチディッシュ)完全解説
EVERNEW(エバニュー)★2026年新作
Apex mulTidish(アペックス マルチディッシュ)ECAL761
Apexシリーズ専用の蓋兼ディッシュ。0.4mm厚で15gの剛性感ある設計。外被せ構造でカップ内容物に干渉せず、逆さにすると摘みやすくなるリバーシブル設計。OD缶収納時でも上から被せられる。旧mulTiDish(EBY280・外径104mm)よりも小径(94mm)でApexカップにフィット。
Apex mulTidishは旧mulTiDish(EBY280)の「Apex cup版」として2026年に登場した。旧モデルは外径104mmで、Apex cupの外径91mmより大きすぎて蓋として機能しなかった。Apex mulTidishは径94mmに小径化し、Apex cupの外側に被せる専用設計になっている。
外被せ構造のメリットは「カップ内の内容物に蓋が干渉しない」点だ。内嵌め式の蓋と違い、カップの縁の外側に被さるため、熱い飲み物や食材がある状態でも問題なく蓋ができる。逆さにして置くと高さ14mmのリムが摘みになるリバーシブル設計も実用的だ。
素材は0.4mmを採用している。0.2mmでは蓋としての剛性が不十分なため、Apex cupより一段厚い素材を選択した。それでも15gという数値は十分軽い。旧mulTiDishが13gなので、2gの重量増でApex cup専用機能を得られると考えれば合理的な選択だ。
Apex cup t0.2(アペックスカップ)
EVERNEW(エバニュー)
Apex cup t0.2(アペックスカップ ティーゼロポイントツー)ECAL731
アウトドアブランド世界初の0.2mm厚チタンカップ。容量300mlで29gを達成。110サイズOD缶へのシンデレラフィット・錆移り防止クリアランス設計など細部まで徹底された日本製。
Apex mulTidishと旧mulTiDishの違い:どちらを選ぶか
| Apex mulTidish(ECAL761) | 旧mulTiDish(EBY280) | |
|---|---|---|
| 重量 | 15g | 13g |
| 外径 | 94mm | 104mm |
| 高さ | 14mm(深め) | 5.5mm(浅い皿型) |
| Apex cup対応 | ◎(専用設計) | ✕(大きすぎる) |
| Ti 400FD対応 | △(外径が小さい) | ◎(専用サイズ) |
| 用途 | 蓋・小皿・リバーシブル | 蓋・アルスト皿・小皿 |
| 価格 | ¥1,650 | ¥1,540 |
Apex cup t0.2を持っているならApex mulTidish(ECAL761)一択だ。旧mulTiDishは外径104mmで、Apex cupの外径91mmより大きく蓋にならない。
Ti 400FD(ECA530)・Ti 570FD(ECA531)などの従来シリーズを使っている場合は旧mulTiDish(EBY280)が依然として正しい選択だ。外径104mmが400FD・570FDにフィットする設計になっている。
どちらのカップを持っているか——それだけで選択肢が決まる。
スタッキング完全ガイド:「OD缶+Apex cup+Apex mulTidish」をどう収納するか
Apexシリーズの設計の肝は「110サイズOD缶を中心としたスタッキングシステム」にある。
基本の収納形は以下の通りだ。110サイズOD缶の外側にApex cup(外径91mm・深さ57mm)を被せ、その上からApex mulTidish(径94mm)を被せる。この状態でポットの中に入れれば、3点が1パッケージに収まる。対応するポットはTi Mug pot 500(ECA537)・MP500 Flat(ECA620)・アルミクッカー550FD(ECA125)の3製品だ。
注意点として、Apex cupは単体でのザック収納を推奨しない(変形リスク)。必ずOD缶や他クッカーにスタッキングして保護した状態で運ぶこと。
こんな人にApexシリーズをすすめる・すすめない
こんな人におすすめ
- クッカー系の重量を1gでも削りたいULハイカー
- ファストパッキング・スルーハイクのクッカーシステムを再構築したい方
- 110サイズOD缶をすでに使っている方
- 日本製・純チタンにこだわる方
- 「カップ+蓋」を最小重量(29g+15g=44g)でシステム化したい方
こんな人にはすすめない
- 調理(炒め物・ラーメン以上の料理)をしたい方(容量300mlは湯沸かし専用に近い)
- 単体でザックに放り込む雑な運用をしたい方
- コスパ重視の方(Ti 400FDは¥2,860・50gで実用十分)
- キャンプで大人数使用を想定している方
よくある質問
Apex cup t0.2は直火で使えますか?
チタンは直火対応素材ですが、0.2mmという薄さのため変形リスクがあります。エバニュー公式は単体での持ち運びを推奨しておらず、直火使用については公式の最新情報をご確認ください。湯沸かし用途としてガスストーブと組み合わせる使い方が基本です。
Ti 400FDからApex cup t0.2に乗り換える意味はありますか?
重量が50g→29gで21g削れます。容量は400ml→300mlに減るので、250ml以上のお湯を使う場合は不足します。「コーヒー1杯・カップラーメン1杯分の湯量で足りる」スタイルの方には意味があります。価格は¥2,860→¥4,730と高くなるため、21gのために¥1,870払えるかが判断軸です。
Apex mulTidishは旧mulTiDishの完全な後継ですか?
Apexシリーズ専用の後継です。Ti 400FD・570FDなどの従来カップには外径が合わないため、従来カップユーザーは旧mulTiDish(EBY280)が引き続き正しい選択です。
110サイズOD缶以外でもスタッキングできますか?
Apex cupの内径87mmに入るものであれば収納できます。エバニュー公式では対応ポットとしてTi Mug pot 500・MP500 Flat・アルミクッカー550FDの3製品が挙げられています。他社ポットとの相性は実測が必要です。
※掲載価格・スペックは2026年3月時点のものです。最新情報はEVERNEW公式サイトでご確認ください。

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