トレランシューズはロードシューズと別物だ。グリップ・プロテクション・ドロップ・足型——4つの要素がかみ合わないと、長い下りで爪が死んだり、泥で滑ったり、膝を壊したりする。
この記事では入門者が最初の1足を選ぶためのモデルから、ガチのトレイルランナーが実際に選んでいるコアなモデルまで7つに絞って比較する。「何をどう選ぶか」から始めて、用途別のおすすめで締める。
- トレランシューズの選び方:4つのポイント
- 7モデルスペック比較表
- ① ALTRA Lone Peak 9+|ゼロドロップ入門の定番・スルーハイカーも愛用
- ② Salomon Speedcross 6|泥・ぬかるみのグリップ番長、定番中の定番
- ③ La Sportiva Jackal II|テクニカルロング向け、Frixionグリップと快適性の両立
- ④ Notace Yama T1|2025年デビューの新星・ゼロドロップ×215gの衝撃
- ⑤ Salomon S/LAB Ultra 3|ウルトラレース本番用・ロングの速さに特化
- ⑥ La Sportiva Mutant|テクニカル・泥・岩もこなすガチの万能シューズ
- ⑦ ALTRA Olympus 6|ゼロドロップで最高のクッション、ロング快適性の頂点
- 結局どれを選べばいい?用途別まとめ
トレランシューズの選び方:4つのポイント
ドロップ(かかと〜つま先の高低差) はシューズ選びで最も影響が大きいポイントだ。一般的なランニングシューズは8〜12mmのドロップがあるが、トレランシューズは4〜12mmと幅広い。ゼロドロップ(0mm)は自然な足の動きに近く、スルーハイカーやUL系に人気だが、慣れていない人が急に使うとアキレス腱を痛めやすい。
グリップ(アウトソールのラグ) は走るトレイルの状況で選ぶ。ぬかるんだ土・泥ならラグが深くて間隔が広いモデル(Salomonのスピードクロスが代表格)。硬い岩稜・ドライなシングルトラックなら、ラグが浅くて剛性が高めのモデルが向いている。
重量 は軽いほどいいが、初心者がUL系の薄底モデルから入ると足裏が痛くなりやすい。入門〜中級者は片足300g以下を目安に、スタックハイト(ソールの厚み)20mm以上のモデルから始めると安全だ。
幅(トゥボックス) は特に長距離で重要。日本人は幅広な足型の人が多く、海外ブランドの細いラストでは長時間走ると足の外側が痛くなる。ALTRAとNotaceはフットシェイプデザイン(足の実際の形に沿ったトゥボックス)なので、幅広の人に向いている。
7モデルスペック比較表
| モデル | ドロップ | 重量(M) | スタック | グリップ | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|---|
| ALTRA Lone Peak 9+ | 0mm | 327g | 25mm | Vibram Megagrip | ¥22,000 |
| Salomon Speedcross 6 | 10mm | 298g | 32/22mm | Mud Contagrip® | ¥17,600 |
| La Sportiva Jackal II | 6mm | 290g | 27/21mm | FriXion® AT | ¥22,000〜 |
| Notace Yama T1 | 0mm | 215g | 15.5mm | 独自コンパウンド | ¥25,300 |
| Salomon S/LAB Ultra 3 | 8mm | 265g | 30/22mm | Contagrip® MA | ¥35,200〜 |
| La Sportiva Mutant | 6mm | 320g | 27/21mm | FriXion® XF | ¥26,400〜 |
| ALTRA Olympus 6 | 0mm | 330g | 33mm | Vibram Megagrip | ¥24,200 |
① ALTRA Lone Peak 9+|ゼロドロップ入門の定番・スルーハイカーも愛用
ALTRA / AL0A85PG
Lone Peak 9+
ゼロドロップ+フットシェイプトゥボックスというALTRAの哲学をそのままに、2025年モデルでついにVibram Megagripを搭載。グリップ性能が大幅に向上し、長年のファンが待ち望んだアップデート。トレランだけでなくスルーハイカーにも最も愛されているシューズのひとつ。
Lone Peakは「ゼロドロップに初めて入門するシューズ」としてこれ以上ない選択肢だ。スタックハイト25mmは薄底ではなく、クッションはしっかりある。ゼロドロップ特有の「かかとを高くしない」設計がアキレス腱への負荷を自然に分散し、長距離で足が疲れにくい。
2025年モデル(9+)でVibram Megagripが採用されたことで、旧来の不満だったグリップ不足がほぼ解消された。幅広のフットシェイプトゥボックスは、長時間の山行で足が膨らんでも当たりにくく、日本人の足型にも合いやすい。STRIDE LABが国内での正規取り扱いをしており、試し履きも可能。
ここが好き
- ゼロドロップ入門に最適なスタック厚
- Vibram Megagrip搭載(9+から)
- 幅広トゥボックスで長時間も快適
- スルーハイク〜トレランまで対応
強いて言えば
- ゼロドロップ未経験者は慣らしが必要
- テクニカルな岩稜には向かない
② Salomon Speedcross 6|泥・ぬかるみのグリップ番長、定番中の定番
Salomon / L47766500
Speedcross 6
深いシェブロンラグと独自のMud Contagrip®でぬかるみ・泥トレイルでの食いつきが圧倒的。SensiFit™による足全体のホールド感、EnergyCell+ミッドソールの反発性も高く、レースから練習まで幅広く使えるオールラウンドモデル。
スピードクロスは「泥用グリップシューズ」として世界で最も売れているトレランシューズのひとつだ。深いシェブロンラグ+Y字ラグの組み合わせは多方向のグリップ力を高め、ぬかるんだ林道やレース後半の泥区間でも確実に地面を掴む。
¥18,700という価格もこのリストで最安値。「まず1足試してみたい」という入門者にも、「泥コースのレースに特化した1足が欲しい」という中上級者にも刺さるモデルだ。ただしラグが深いぶん岩の上では滑りやすく、ドライな岩稜帯や舗装路との相性は悪い。用途をしっかり絞って使うのが正解。
ここが好き
- 泥・ぬかるみのグリップが圧倒的
- ¥17,600は全モデル中最安
- SensiFitのホールド感が高い
- Quicklaceで着脱が速い
強いて言えば
- 乾いた岩・舗装路は不向き
- Quicklaceが慣れないと使いにくい
- 幅が細めで日本人の幅広足に合わない場合も
③ La Sportiva Jackal II|テクニカルロング向け、Frixionグリップと快適性の両立
La Sportiva / 56J
Jackal II
Infinitoo®クッションによる高いクッション性と反発性、FriXion ATによるオールテレイン対応グリップを両立。ウルトラレースのロング練習からテクニカルな山岳トレイルまで対応できる懐の深いモデル。
Jackal IIは「長い距離を走るための快適性」に振り切ったモデルだ。Infinitoo®クッションはネガティブインパクト(着地時の衝撃)を吸収しながらエネルギーリターンも高く、50km・100kmといったウルトラ距離でも脚が残りやすい設計になっている。
アウトソールのFriXion ATはイタリアの岩山で鍛えられたLa Sportivaの自社製コンパウンドで、湿った岩・硬い土・根っこといった混合地形での接地感がいい。Speedcrossほどの泥グリップはないが、テクニカルなシングルトラックでは優位性がある。
ここが好き
- Infinitoo®クッションでロング向き
- FriXion ATのテクニカル地形対応
- 幅広めのラストで長時間快適
- 6mmドロップでゼロドロップ未満の自然感
強いて言えば
- ディープマッド(深い泥)は苦手
- 重量290gはやや重め
④ Notace Yama T1|2025年デビューの新星・ゼロドロップ×215gの衝撃
Notace / Yama T1
Yama T1(ヤマ ティーワン)
2025年8月デビューのUSA発新ブランド。Altra・Xero Shoes・Vivobarefootで経験を積んだ創設者セドリック・スコットが「ベアフット未満、厚底以上」を目指して設計。ゼロドロップ×フットシェイプ×215gという数値は既存モデルにない新基準。発売直後に完売続出した注目作。
Notaceはまだ知らない人も多いが、このブランドの登場は静かに業界を揺らした。創設者セドリック・スコットはAltra・Xero Shoes・Vivobarefootという「ナチュラルフットウェアの3大ブランド」全てで経験を積んできた人物で、「ベアフットほど薄すぎない、でも厚底ほど重くない」というコンセプトのYama T1を設計した。
15.5mmのeTPUクッションは360度フレキシブルで足の自然な動きを妨げず、215gという重量はゼロドロップモデルとしては突出して軽い。発売直後に完売が相次いだのは「こういうシューズを待っていた」という人が多かった証拠だと思う。国内の取り扱いはSTRIDE LABが中心。
ここが好き
- 215gはゼロドロップ系で最軽量クラス
- フットシェイプ×eTPUの独自クッション
- トレランからハイキング・日常まで対応
- 「ベアフット未満・厚底以上」という新しいカテゴリ
強いて言えば
- スタック15.5mmは薄めで石の突き上げに注意
- 人気で在庫が不安定
- 新ブランドのため長期耐久性は未知数
⑤ Salomon S/LAB Ultra 3|ウルトラレース本番用・ロングの速さに特化
Salomon / S/LAB Ultra 3
S/LAB Ultra 3
SalomonのS/LABライン(レース向け最上位)のウルトラモデル。265gでスタック30mm・柔軟なアッパーと反発性の高いミッドソールでウルトラレースの「速くて長い」という両立難しい条件をクリア。UTMBやKOSMI等の大レースでもよく見るモデル。
「Speedcrossで練習して、レース本番はS/LAB」という使い分けをしている人は多い。S/LAB Ultra 3はSalomonのレース向け最上位ラインで、ウルトラレースの「100km以上を速く走る」という要求に特化している。265gの軽量・スタック30mmの厚めのクッション・高いエネルギーリターンが長時間レースで効いてくる。
Contagrip MAはオールマイティなグリップコンパウンドで、Speedcrossほど泥に特化していないぶん、乾いた岩やミックス地形での安定感が高い。¥35,200と価格は高いが、レースに使い続けることを考えれば投資対効果は高い。
ここが好き
- ウルトラレース本番に特化したスペック
- 265gでスタック30mmの軽量クッション
- ミックス地形に強いContagrip MA
強いて言えば
- ¥35,200〜と高価格
- 深い泥はSpeedcrossに劣る
⑥ La Sportiva Mutant|テクニカル・泥・岩もこなすガチの万能シューズ
La Sportiva / Mutant
Mutant
FriXion XF(エクストリームフレックス)という泥にも岩にも対応するデュアルコンパウンドを採用。変化する路面に対応する「変異体(Mutant)」の名に恥じない万能性。ガレ場・藪こぎ・泥沢と何でもこなすガチ向けモデル。
Mutantは日本の山で使ったときに本領を発揮するシューズだ。日本のトレイルはガレ場・ぬかるみ・根っこが混在することが多く、「泥専用」「岩専用」では対応しきれない場面が多い。FriXion XFはそのデュアルコンパウンド設計で、泥から岩まで変化する路面に食い込む。
Jackal IIよりアッパーが硬くプロテクションが高いため、荒れた地形・笹薮・渡渉が多いルートに向いている。「自分は登山のおまけ的にトレランをやっている」という人よりも、トレランのためにトレイルを選んでいる人向けのモデルだ。
ここが好き
- FriXion XFで泥・岩・ミックス全対応
- 硬めアッパーで荒地プロテクション高い
- 日本の混在地形にマッチする万能性
強いて言えば
- 320gはやや重め
- 快適性よりプロテクション重視の設計
⑦ ALTRA Olympus 6|ゼロドロップで最高のクッション、ロング快適性の頂点
ALTRA / Olympus 6
Olympus 6
ゼロドロップ×スタック33mmという組み合わせはALTRAのフラッグシップ。「ゼロドロップで足に優しく、かつ長距離でも足裏が痛くない」を実現するクッションの頂点。Vibram Megagripで悪路のグリップも確保。
Olympus 6はALTRAのラインアップの中でスタックハイト最厚のモデルだ。33mmというクッションはHOKAに近い厚さでありながら、ゼロドロップを維持しているのが他にはない特徴。「HOKAのクッションは好きだが、ドロップが高くて足の自然な動きが損なわれる気がする」という人に向いている。
ロングレース・100マイルのトレーニングで足裏の疲労が積み重なる局面でも、このクッションがあれば最後まで走り続けやすい。Lone Peak 9+がゼロドロップ入門なら、Olympus 6はゼロドロップの終着点の一つといえる。
ここが好き
- ゼロドロップ×33mmクッションという唯一無二の組み合わせ
- ロング・ウルトラで足裏疲労が出にくい
- Vibram Megagripで悪路も安心
強いて言えば
- 330gはやや重め
- スタックが厚すぎて地面感覚が薄い
結局どれを選べばいい?用途別まとめ
用途別おすすめ
まず自分のドロップ経験値を確認してほしい。ゼロドロップ未経験なのにいきなり薄底系を選ぶと怪我をする。ゼロドロップに興味があるならLone PeakかYama T1から慣らしを始めるのが正解だ。泥・ぬかるみが多い環境ならSpeedcrossを1足持っておけばほぼ外れない。
※掲載価格・スペックは2026年3月時点のものです。モデルチェンジ・価格変動がある場合があります。最新情報は各ブランドの公式サイトでご確認ください。


コメント