マット比較

RabとNEMOのエアマット7本を、実際に山で使う視点でまとめた。スペック表を眺めてもピンとこない「R値ってどこまで必要?」「軽いほどいいの?」といった疑問にも答えていく。

マット選びで軸になるのはR値と重量の2つ。R値は地面からの冷えをどれだけ遮断できるかを示す数値で、高いほど保温性が上がるぶん、だいたい重くなる。軽さを追えば夏山は快適でも、秋の稜線で寒くて眠れなくなる。その線引きをどこに置くかが、マット選びのほぼ全てといっていい。

2026SSはRabのUltrasphereシリーズが世代交代し、重量を落としながらR値を上げるという相反する改善を同時にやってのけた。NEMOはTensor Eliteというほぼ空気みたいな重さのマットを出してきた。Therm-a-RestのNeoAir Uberliteが廃番になって以来、SUL(スーパーウルトラライト)クラスには空白があったが、その穴を突いてきた格好だ。

一覧比較表

まず7本を並べて見てほしい。数字を横断すると、どのモデルが何を犠牲にして何を得ているかが見えてくる。

モデル 種別 R値 重量 厚さ 収納 対応季節
Rab Ultrasphere 4.5
QMA-06
エアマット

4.3

372g 8cm 16×9cm 3〜4シーズン
Rab Ultrasphere 5
QMA-10 2026SS
エアマット

5.5

345g 8cm 18×9cm 3〜4シーズン
Rab Ultrasphere 5 Wide
QMA-11 2026SS
エアマット

5.5

440g 8cm 19×9cm 3〜4シーズン
Rab Ultrasphere 5 Dark Pewter
QMA-13 2026SS
エアマット

5.5

345g 8cm 18×9cm 3〜4シーズン
NEMO Tensor Elite
Tensor-Elite 2026SS
エアマット

2.4

240g 7.5cm 1L以下 春〜秋
NEMO Switchback
NM-EAS
クローズドセル

2.0

415g 2.3cm 折りたたみ 3シーズン
NEMO Zor
NM-ZOR
セルフインフレ

2.3

405g 2.5cm 18×13cm 3シーズン

各モデルを詳しく見る

数字だけではわからない、実際の使い勝手と向き不向きを書いていく。

Rab Ultrasphere 4.5

Rab

Ultrasphere 4.5

R値4.3
重量372g
厚さ8cm
収納16×9cm

3〜4シーズン対応 / ISPO Award 2023

Ultrasphereの初代にあたるモデルで、2023年にISPO Awardを受賞した。372gでR値4.3というのは当時かなり攻めた数字で、2層のTILT(熱反射フィルム)とオフセットエアチャンバーを組み合わせて、嵩張る断熱材なしにここまで持ってきた設計は今見ても面白い。

ただ正直に言うと、今から買うなら後継のUltrasphere 5のほうがいい。軽くてR値も高い。4.5を選ぶ理由があるとすれば、在庫限りで値段が下がっているときか、「Rabを一度試してみたい」という入門としてか、くらいになってしまった。

Good

  • ISPO受賞の実績ある設計
  • 16×9cmと驚異的なパックサイズ
  • 20Dリサイクルポリエステル+TPUで信頼性あり
  • ポンプサック・リペアキット付属

Note

  • 後継(Ultrasphere 5)がより高性能
  • 51cm幅は体格によってやや狭い
エアマット / 3〜4シーズン
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Rab Ultrasphere 5 QMA-10

Rab 2026SS

Ultrasphere 5

R値5.5
重量345g
厚さ8cm
収納18×9cm

2026SS新モデル / 前世代比 R値+28%

前の4.5からどう変わったかというと、重量が372g→345gに落ちて、R値が4.3→5.5に上がった。普通どちらかを改善すればもう一方が悪化するものなのに、両方良くなっている。新設計のオフセットエアチャンバーが対流による熱損失を抑えているのが効いているらしい。

R値5.5あれば、夏山から晩秋の縦走まで1枚でほぼカバーできる。厳冬期の高所は流石に厳しいが、3〜4シーズン用として持つなら、今市場に出回っているエアマットの中でも重量対保温のバランスは相当いい部類に入る。スルーハイクやバイクパッキングで荷物を削っている人に特に向く。

Good

  • 345gでR値5.5——重量対保温比がトップクラス
  • 前モデルより軽量かつ高断熱
  • 収納18×9cmと極めてコンパクト
  • 20Dリサイクルポリエステル製

Note

  • 幅51cmのみ(ワイドが欲しい場合はQMA-11)
  • 20Dは軽量だが鋭利な岩面には注意
エアマット / 3〜4シーズン
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Rab Ultrasphere 5 Wide QMA-11

Rab 2026SS

Ultrasphere 5 Wide

R値5.5
重量440g
サイズ183×64cm
収納19×9cm

2026SS新モデル / ワイド64cm設計

QMA-10の幅51cmをそのまま64cmに広げたモデル。100g重くなるが、寝返りを打ってもマットの端から落ちなくなる。これが思いのほか睡眠の質に効く。特にキルトやクォルトを使っている人は、マットの幅が足りないとサイドが地面に触れて冷えるので、ワイドにする意味がエアマット単体より大きい。

ただしテントの床面積は有限なので、1人用の細いテントだとはみ出すこともある。収納サイズは19×9cmとほぼ変わらないのはよく頑張ったと思う。

Good

  • 64cmワイドで快眠性が大きく向上
  • R値5.5を維持しつつ収納はコンパクト
  • クォルトユーザーに特に有効

Note

  • 標準幅より約100g重い
  • テントサイズによっては窮屈になることも
エアマット / 3〜4シーズン / ワイド
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Rab Ultrasphere 5 Dark Pewter QMA-13

Rab 2026SS

Ultrasphere 5
Dark Pewter

R値5.5
重量345g
カラーDark Pewter
収納18×9cm

2026SS新カラー / スペックはQMA-10と同等

スペックはQMA-10と完全に同じ。R値5.5、重量345g、収納18×9cm。違いはカラーだけで、このDark Pewterはかなり落ち着いた暗いグレーになっている。

機能で選ぶならQMA-10と差はないので、色で選ぶ一本。ダークトーンは汚れが目立ちにくいし、山の景色にも馴染む。どうせ毎晩使うものだから、気に入った色を選ぶのは割と正しい判断だと思う。

Good

  • Ultrasphere 5の性能をダークカラーで
  • 汚れが目立ちにくい
  • R値5.5・345gは変わらず最高水準

Note

  • QMA-10と性能差なし(カラー違いのみ)
  • 在庫・サイズ展開は要確認
エアマット / 3〜4シーズン / Dark Pewter
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NEMO Tensor Elite

NEMO 2026SS

Tensor Elite

R値2.4
重量240g
厚さ7.5cm
収納1L以下

2026SS新登場 / 7本中最軽量 / SUL向け

240g。これが何を意味するかというと、Nalgene 1Lボトルより小さく収納できて、持ったときに「入ってる?」と思うくらい軽い。Therm-a-RestのNeoAir Uberliteが廃番になってからこのクラスに空白があったが、NEMOがそこに投げてきた。素材は10D CORDURAナイロン。薄いが繊維の密度で強度を出している。

ただしR値は2.4しかない。春から秋の低山〜中山なら問題ないが、標高が上がる晩秋や残雪期には完全に不足する。あとこの薄さだと岩のとがった場所に直接置くのは正直怖い。グラウンドシートを敷くか、テントのフロアにそのまま使うほうが無難だ。

Good

  • 240gという圧倒的な軽さ
  • 1L以下の極小パックサイズ
  • 静かな素材感で夜中も快適
  • Vortex™ポンプサック付属

Note

  • R値2.4は冬季・高山には不足
  • 10D素材は繊細——岩場での取り扱い注意
  • マミー形状のみ(ワイドなし)
エアマット / スリーシーズン / SUL
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NEMO Switchback

NEMO

Switchback

R値2.0
重量415g
厚さ2.3cm
形式折りたたみ

クローズドセルフォーム / パンクなし

空気を入れない、パンクしない、広げるだけで使える。クローズドセルフォームの良さはそこに尽きる。SwitchbackはNEMO独自のAxiotomic™フォームを使っていて、従来の銀マット系と比べると格段にクッション性がある。六角形のノード構造が体圧を分散する仕組みで、素材の工夫でここまで変わるかという感じ。

単体で使うには春〜秋の低地向けだが、冬季にエアマットの下に敷くサブマットとして使うのが玄人の定番。Ultrasphere 5(R値5.5)と合わせればR値7.5を超え、かなりの冷え込みにも耐えられる。エアマットがパンクしたときの保険として持ち歩く使い方もある。

Good

  • パンクが物理的に起こらない安心感
  • 設営・撤収が一瞬
  • 冬季エアマットとの重ね使いに最適
  • ランチ時の座布団など多用途

Note

  • R値2.0は単体では春〜秋限定
  • バルクが大きくパックに収めにくい
クローズドセル / スリーシーズン
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NEMO Zor

NEMO

Zor

R値2.3
重量405g
厚さ2.5cm
形式セルフインフレ

セルフインフレーティング / 2軸コアリング

バルブを開けて広げておくと勝手に膨らんでくる、セルフインフレーティング方式のマット。フォームが復元する力で空気を引き込む仕組みなので、完全に膨らみきるまで5〜10分かかるが、その間に他の設営を進めればいい。最後に少し口で補充すれば完成。

Zorの特徴はNEMO独自の「2軸コアリング」で、フォームを縦横に刳り抜いて軽量化しながら断熱層を残している。フォームベースなので断熱性が外気温で変化しにくく、気温が下がっても性能が落ちにくい安定感がある。エアマットのような高R値は期待できないが、信頼感という意味では一段上。山慣れしてきて、道具に確実性を求めるようになった人に向く。

Good

  • 広げるだけで自動膨張——操作が楽
  • フォームの断熱は気温に影響されにくい
  • 2軸コアリングで軽量化と保温を両立

Note

  • R値2.3は春〜秋の3シーズン用途
  • エアマットよりパックサイズで劣る
  • 完全膨張まで5〜10分かかる
セルフインフレート / スリーシーズン
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シーン別おすすめ

スルーハイク
Ultrasphere 5(QMA-10) — 軽さとR値5.5の両立が最強
快適性重視
Ultrasphere 5 Wide(QMA-11) — 幅64cmで熟睡できる
ファストパック
NEMO Tensor Elite — 240gの非常識な軽さ
冬季サブマット
NEMO Switchback — Ultrasphere 5と重ねてR値7.5超
入門・バックアップ
NEMO Switchback / Zor — 壊れない安心感と価格の安さ

どれを選ぶか

迷っている人への結論から言うと、3〜4シーズンのエアマットを1本買うならUltrasphere 5(QMA-10 / QMA-13)でほぼ間違いない。345gでR値5.5は、この価格帯で現時点のベストだ。幅が気になる人はワイド(QMA-11)にすれば快適性がかなり上がる、その代わり100g重くなる。

とにかく軽くしたいならTensor Elite。ただしR値2.4は夏山専用と思ったほうがいい。秋の2000m越えでこれ1枚は冒険になる。

冬に山に行く、または高い山で使うならSwitchbackをサブに加えるのが現実的。Ultrasphere 5と合わせてR値7.5超になり、かなりの寒さに対応できる。そのSwitchbackは単体で夏山に持っていけばパンク知らずで使えるので、2本持っていて損はない。

Zorはどちらかというとキャンプ寄りの選択肢で、山岳テント泊より快適さを求める場面や、道具をシンプルに使いたい人に向く。

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